3月2日 日曜日

 今日は、ルカの四十九日。俺は、皆に声を掛けなかった。ただ、ルカの母親と美里と恭一さん、それに尊だけを呼んで和尚の所でささやかに経をあげてもらった。とにかく時間が惜しかった。フランスへ行くための準備と何十年かぶりの勉強の時間に当てたかった。それに、皆の顔を見れば、何処かで揺れ動いてしまいそうな自分がいることを俺は恐れたのだ。だから、尊たちに言った以外は、誰にも言わないでおいたし、他の連中にも内緒にしておいて貰った。このことを知れば、連中の事だ、何やかにやと言ってくる。それが解るだけに、俺は100ヶ日法要までは言わないでおきたかったのだった。
 法要の後、簡単に食事を取りルカの思い出話をしたが、時折襲ってくる痛みに俺は、どうして良いのか分からなくなった。笑顔を見せながらも、俺はにはまだ、思い出になど出来ない。早々に場を切り上げ、俺は帰途に着いた。
 家に帰ると、電話が鳴った。尊からだった。
 「よお、純平」
 「何だよ、尊。今会ったばかりじゃないか。どうしたんだ?」
 「どうもしないさ。ただ・・・・・」
 「ただ、何だよ」
 「いや、何でもない。まあ、頑張れや。そうだ、発つ前に、飲みに来いよ。それだけだ。じゃあな」
 「ああ」
 電話は、それで切れた。俺は、受話器を置くと、笑った。尊の気持が嬉しくて、笑った。そして涙が零れた。それは哀しみの涙ではなく、暖かい涙だった。俺は、煙草を取り出すと『サンキュー、尊』そう呟いて、吸った。
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by karura1204 | 2004-12-01 00:01 | エピローグ
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