1月16日 木曜日

 次の日、美里が美紀ちゃんを連れてきた。香典返しに送る品物の手配をしてくれる為だった。
 「美紀ちゃんまで、悪いね。子供がいるのに・・・」
 「良いのよ、気にしないでちょうだい。これもストレス解消よ。いつも子供の相手ばかりだと、疲れるの。たまには、こうしてひとりで動くのも必要なのよ」
 「それでね、美里さんとも話したんだけれど、カタログの中のこれとこれが、一番良いと思うのよ」
と、俺にカタログを見せて言った。指差された先には、タオルケットとティーセットがあった。俺は、チラッと見ると、
 「ああ、それで良いよ。って言うか、ふたりに任せるよ。香典の中から、ふたりが良いと思うものを手配して欲しい。俺じゃ、よく解らないから、頼むよ。それに、ふたりなら、俺とルカの趣味とか判るだろう」
そう、言った。いや、それしか言えなかったのだった。
 「解ったわ。美紀ちゃんとやっておくわ。リスト、暫く預かっておくわね、良い?」
 「ああ、良いよ。悪いな」
 「良いわよ、気にしないで。決まったら、また報告に来るから。香典の会計だけ、ここに置いてゆくわ。観ておいてね。香典は、私が預かるわ」
 「ああ」
ふたりは顔を見合わせ、そして、
 「じゃあ、何か食べに行かない?純平、食べてないでしょう」
と言った。
 確かに俺は何も食べる気が起きず、ろくな物も口にしていなかった。だが、
 「食べたよ」
と嘘を付いた。
 「嘘ばっかり。キッチンが綺麗過ぎるわ」
 「俺の家は、いつもそうだよ」
 「美里さん、私、何か作るわ。手伝って」
 「良いよ、美紀ちゃん」
 「そうね、作りましょう」
 「美里」
 「純平さん、尊じゃないから、美味しいかどうか解らないけれど、何か食べなきゃ、参っちゃうわ。気にしなくて良いから、食べてちょうだい」
 そう言うと美紀ちゃんは、キッチンへ行き、冷蔵庫を開けると食事を作り始めた。
 俺は、ふたりの後姿を見ながら、ルカと食事を作っていた俺たちを思い出していた。ルカのはしゃいだ声が聞こえてくるようで思わず、涙が溢れそうになった。それを隠すために、
 「ごめん、煙草が切れた、買いに行って来るよ。すぐ戻るから」
そう言い、外へ出た。別に煙草はまだあったのだが、見ていられなかったのだった。
 マンションの周りを、ただ、ぶらぶらと歩いた。手ぶらで帰って怪しまれるのも嫌なので、ふたりのために飲みものを買い、煙草をワンカートン買って部屋へと戻った。
 「ただいま。飲み物なかっただろう。ついでに買ってきたよ」
 「おかえり。ありがとう、純平気が利くわ」
 ふたりの、おかえりという声が俺の胸を締め付けた。『出かけなきゃ良かった・・・』苦い後悔がよぎった・・・テーブルには、スパゲティが出来上がっていた。俺は、それを美味そうに食べた。それを見たふたりは、安心したように、帰って行った。
 ふたりが帰った後、買ってきたばかりの煙草に火をつけると、吸うわけでもなく、煙をくゆらせていた・・・・・『ルカ、君は今、何処にいる・・・・・?』
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by karura1204 | 2004-12-01 00:15 | 第六章 冬の花火
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