11月21日 木曜日

 オートロック扉は完成した。その前日、ルカは、業者と一緒に鍵の引渡しに参加した。そして、指定日に取りに来られない人のために、1日中待機して、鍵を渡してくれていた。俺も、そう言う中のひとりだった。
夜、出来立てのオートロック扉の部屋番号を、俺はドキドキしながら押した。
 「ただいま」
 「開けるわね」
 自動ドアがスーッと開く。俺は、安堵の思いで出来たての自動ドアをくぐり、部屋へと向かった。玄関の前には、ルカが待っていた。
 「どうだった?」
 「うん、感動したな」
 「私も。はい、これ鍵。これで最後だわ」
 「遅くまで大変だったろう、ありがとう」
 「良いのよ。ねぇ、下に行って見ない?」
 「ああ」
 俺たちは、エントランスへ行き、オートロック扉や宅配ボックスを暫く眺めた。月明かりに照らされ、エントランスは光っていた。俺は、完全とは言えないかも知れないが、これで、少しは安心できると思っていた。
 「部屋、帰ろう」
 俺は、ルカの肩を抱き、渡された鍵でロックを開けた。エレベーターで最上階の俺たちの部屋へ向かう中、ルカは興奮気味に言った。
 「そうそう、お隣の部屋との壁にドアがついたの。次回から、そのお部屋でお教室開くわね。純との部屋は、大事にしたいものね」
 「ああ」
 俺はルカを抱きしめた。部屋に入ると、ルカは、新しくなった風呂や教室にする部屋を嬉しそうに案内した。余程嬉しく、安心したのだろう。案内し終わると、ルカは、
 「ね、お祝いにワイン用意しておいたの、軽く飲みましょう」
と俺の腕を引いて、部屋に戻った。テーブルにはワインと料理が並んでいた。
 「豪勢だね」
 「ええ、頑張っちゃいました」
俺は早速ワインを開け、グラスに注いだ。
 「それでは、オートロック完成を祝して、乾杯」
 「乾杯」
 俺たちは、ワインを楽しみ、リフォームした風呂に浸かり、ベッドでじゃれあい眠りに着いた。

 だが俺は、オートロック扉を設置したその事で、少し安心し過ぎていた。ルカも同じだった。だから、俺たちに襲いかかってくる魔物の正体に気付く事が出来なかった。それほど魔物は、俺たちより深く静かに進攻していたのだった。
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by karura1204 | 2004-12-01 01:30 | 第五章 時の狭間
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