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9月28日 木曜日 1

 今日は、会社で管理会社に会う予定にしていたが、夜、峻と会う約束も出来たので、家に来てもらうことに変えた。10時、管理会社の人間が、施工会社の人間を伴ってやってきた。俺は、ルカを紹介し、今後一切を任せたと説明をした。そして、直ぐにでも工事を始めて欲しいと頼んだ。オートロックとオートロックに伴う鍵の変更、テレビインターフォン、宅配ボックスの設置を積み立ててきた管理費で賄う。それ以上になる時は、俺が負担することに決め、来週の火曜までには、見積もりと、工期予定計画を持ってこさせることにした。
 それと、隣の部屋が出てゆくことになったと言うので、この部屋を広げてもらう計画も立てた。隣が空けば、ルカの仕事場にしても良いと思ったし、ふたりでゆっくり入れる風呂だけでもリフォームしてもらえればと思ったのだった。その計画を含めて、大体500万を俺は見ていた。もし、それ以上であれば、他の施工業者をあたるか、別な会社を呼んで、比較検討しようと思っていた。

 昼前には、管理会社と施工業者が帰った。俺は、ルカに、夜、美里や峻に会うことを告げた。
 「横浜で、美里達に会う事になっていてね、ルカも良かったら来ないか?」
 「美里姉に?何で?」
 「いや、美里って言うより、峻って言う奴に会いに行くんだ。そいつ、刑事やっている。まだ、新米だけれどな。交番勤務が終わって、刑事を希望したんだ。そいつに、身を守る方法とか教えてもらおうと思ってな」
 「そう・・・・・どうしようかな?」
 「無理しなくて良い。来たかったらおいで。ルカだってたまには美里と会うのも良いだろう?」
 「そうね、ここのところ、ずっと家に居たから、それもいいかもしれないわね」
 「じゃあ、決まりだ。早いけれど、横浜でぶらぶらしながら、何か食べよう」
 「それ、良いわね」
 俺たちは、用意をすると横浜に出た。大手デパートを見て回り、美味しい紅茶の店でお茶をしながら楽しんだ。

 20時、約束の店に行った。美里は、先に来て、店のママ、マーコと話していた。
 「ママ、久しぶり」
 「あら、純平ちゃん、いらっしゃい」そう言うなりマーコママは俺に抱きつき、早口で喋った。
 「峻ちゃんも来るんですって。ミサっチャンから聞いたわよ、懐かしいわね。タケちゃんは元気?」
よほど、俺たちに会うことが嬉しかったようだ。
 「ああ、峻ももう直ぐ来るよ。尊、元気だよ。3人目の男の子が生まれたよ。女の子が出来るまで頑張るつもりじゃないかな?」
 「そう、あら、純平ちゃん、そちらさんは?」
 「ああ、紹介するよママ、俺の婚約者で、ルカ」
 「ルカです。よろしくお願いします」
 「そうなの、まあー、それは良かったわ。おめでとう」
 「ありがとう」
 「素敵なお嬢さんじゃない」
 「純平、ちょっと」
美里が俺をつついた。
 「何でルカを連れて来たの?」
 「連れて来ちゃまずかった?」
 「まずくはないけれど、大丈夫なの?」
 「ああ」
そこへ峻がやってきた。
 「なんだ、ふたりとも早いな」
 「お前が遅いんだよ。10分は過ぎているぞ」
 「そうか?」
 「ああ、時計見てみろよ」
 「ん?あ、悪い、時計止まっていたよ」
 「峻、あんた刑事でしょう。そんな事で刑事務まるの?」
 「相変わらず、マドンナ殿は厳しいね」
 「峻ちゃん、いらっしゃい」
 「お、マーコママ、久しぶり。元気だった?」
 「元気よ。今日は、あんた達に会えて、嬉しいわ」
 マーコママは、峻にも抱きついて再会を喜んでいた。
 「ママ、いつもの頼むよ。で、ちょっと話があるから、隅を使わせてもらうよ」
 「良いわよ、純平ちゃん。何かの相談なんでしょう。仕切り作ってあげるから、ゆっくり話しなさい」
 「ありがとう。マーコママ」
俺たちは、隅に陣取った。
 「峻、紹介するよ。俺の婚約者、ルカだ」
 「あなたが、ルカさん。尊から噂は聞いていましたよ。よろしく」
 「こちらこそ、よろしくお願いします」
 俺たちは、学生時代に食べていたマーコママ特製のオムライスをほおばりながら、暫く他愛のない話をした。その後、マーコママが淹れてくれた珈琲を飲み、肝心の話を切り出した。
 「実は、ルカが狙われていてね」
 「おいおい、穏やかじゃないな」
 「そうじゃないの。狙われているという表現は違うわ。純平、誤解させちゃだめよ。ルカは、私の妹なのね。ルカ、意に染まない縁談を持ちかけられていて困っているのよ。いつ、実家から、連れ戻されるかって怯えているのよ」
 「そうなんだ」
 「なんだ、脅かすなよ。で、俺にどうしろって言うだ?」
 「今、俺のマンション、オートロックに変えるところだ。だが、それだけじゃ不安でな。他に良い方法がないかと思って・・・・・ずっと家にいるのも、ストレス溜まるだろう?」
 「家にいるって、純平と暮らしているのか?」
 「ああ」
 「籍はまだ入れていないのか?」
 「ああ、まだだ」
 「とりあえず、籍だけ入れちゃえよ。そうすれば、いくら親でも無理矢理は連れ戻せないだろう」
 「そうね、その手があったわね」
美里は、ひとり盛り上がった。
 「そうしなさいよ、籍入れちゃえば、お父様だって何も手出しできないから、ね、ルカ」
 「本当にそうかしら?」
 「言えないようにしてあげるわ。私に任せなさい。明日、役所で紙を貰ってきてあげるわ」
 「でも、美里姉、明日、役所は休みじゃないの?」
 「確か、婚姻とか出産等は、休みでも受け付けるんじゃなかったかしら?」
 「さあ・・・・」
 「まあ、良いわ。明後日でも。保証人みたいなのがいるなら、尊に頼みなさいよ。ね。月曜日は、尊の店休みでしょう。私、尊にも電話しておくから、マンションに来てもらうわ。その方が早いわよ」
 「ああ」
 「あのね、純平、ああだけじゃ駄目よ。意気込みはどうしたの?」
 「いや、籍を入れてしまうという考えが思いつかなかったから・・・・・」
 「しょうがないわね」
 「いや、硬派と言うか純情派の純平らしいと俺は思うよ。こいつが、ナンパ師だった事が間違いなんだから」
 「まあねぇ・・・ちょっと待てていて。善は急げ。尊に電話してくるわ」
そう言うと、美里は電話を掛けに行ってしまった。
 「純平、お前大変だな。まあ、見回りは強化出来るか判らないが、お前の住んでいる所に、誰か知り合いが居ないか、探してみるよ。越権行ためにならないようにな」
 「悪い、峻」
 「良いよ。気にするな。お前が本気で惚れた人だろう。色々、世話なっている礼だよ。ルカさん、頑張りな。俺たち、応援するから」
 「ありがとうございます」
そこへ美里が戻って来ると、
 「尊、これから来るって」
 「此処に?」
 「ううん、純平のマンション。だから、マンションに行こう」
 「待ってくれよ、そんな急に」
 「何を怖気づいているのよ、純平。ほら、行くわよ」
 俺は、怖気づくというより、俺やルカの意思を通り越し、物事が進められそうな事が、内心嫌だと思っていた。ルカも、戸惑っているようだった。だが、美里の剣幕に、圧倒され、マンションへ行くことにした。
 「ママ、ありがとう。また来るわ」
 「あら、もう帰っちゃうの。淋しいわね」
 「今度は、もっと大勢で来るわ。昔みたいにね」
 「待っているわよ」
 「じゃあね、マーコママ」
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by karura1204 | 2004-12-01 01:33 | 第五章 時の狭間
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