次の日、俺は午後一番で、内線電話で神保嬢を呼んだ。
「神保君。ちょっと時間、良いかな?」 「はい」 「じゃあ、総務の小会議室へ来てくれ」 「はい。5分で伺います」 電話は切れた。自分で時間を指定する人間も珍しい。こういう几帳面さを高橋嬢は買っているのだろう。確かに約束通り5分で小会議室に神保嬢は現れた。 「チーフ、どんなご用件でしょうか?」 単刀直入に聞いてくる。俺はおかしくなって、笑ってしまった。 「何か変なことを言いましたか?」 「いや、そうじゃない。まあ、掛けて」 「はい」 「コレを見て欲しい」 俺は、高橋嬢のメモを見せた。 「実はね、今度の仕事で、君に是非やって欲しい仕事があるんだ」 「はぁ・・・どんな?」 「部内秘書。珠樹君のやっていた仕事だ。会社側としては廃止した制度だが、今回のプロジェクトでは、部内秘書が欲しい。家田統括部長に了解済みだ。誰が良いか決めかねていたが、そのメモにあるように、君を強く推薦してくれた人がいてね。君の仕事振りを高く評価してくれた。どうだろうか、引き受けてくれないか?」 「それは、私にSEの素養がなと言うことなのでしょうか?」 と、不安そうに聞いた。 「いや、違う。SEとしての専門知識があって初めて、この仕事が出来る。俺はそう思っている。確かに雑用になってしまうかも知れない。しかし、顧客からのクレーム、フィールド部門からの質問に正確に答えられなくてはならないと思う。そのためには、しっかりしたSEとしての素養のある人間で無ければならないと思う。そう言う意味から言って、神保君、君が適任だとね」 「そうですか」 「誤解しないで欲しい。君を推薦してくれた人間は、最初、自分がやろうと言ってくれた。それを俺が断った。君に代わる、確かな人材を育てないと、君も駄目になると言ってね。だから、俺は、神保君、君に期待して部内秘書を任せたい。前々から、君の仕事の正確さには感心していた。君の書類にはミスがない」 「高橋先輩でしょう、私を推薦したのは。字を見れば解ります」 「そうか、解るかやっぱり」 「ええ」 「即答が無理なら、考える時間を取るよ」 「いいえ、是非させて下さい。お引き受けします」 「ありがとう」 「実は、高橋先輩には、良くしてもらっていますし、私、高橋先輩に憧れています。素敵な女性でしょう。私にはない所が沢山あって、見習わなくちゃなぁと思っています。その、高橋先輩からの推薦とあっては、引き受けなくちゃ勿体なですよ、ねぇチーフ」 「そうだな。それじゃあ、緊急チーム会を開いて、このことを伝える。社内にいる人間に声を掛けてきてくれ。俺は此処で待っている」 「わかりました」 三々五々、会議室に人が集まった。俺は、その間に、伝達こと項を纏め部内秘書の件を話した。
by karura1204
| 2004-12-01 01:45
| 第三章 黒点
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